
50代未経験で介護職はきつい?|地方移住後に特養で働いてわかった仕事内容と現実
「介護の仕事はきつい」とよく言われます。
確かに、介護には大変な仕事がいくつもあります。
利用者さんとのコミュニケーション、排泄物の処理、無理な体勢での介助、体を支える動作など、体力的にも精神的にも負担を感じることがあります。
でも、私は介護が特にきついと感じる理由は、仕事内容そのものだけではないと思っています。
介護は、人の命や、その先の生活を預かる仕事だからです。
例えば、介助のときに少し支え方を間違えたり、確認を怠ったりすることで、転倒やけがにつながることがあります。
高齢の方は、転んだことをきっかけに骨折し、その後の生活が大きく変わってしまうこともあります。
荷物なら落としてしまっても、壊れたものを買い直せば済むことがあります。
でも、人はそうはいきません。
だからこそ、介助をするときは「まあ、これくらいでいいか」と適当にすることができません。
常に安全を考えながら動く必要があり、その責任が精神的な疲れにつながるのだと思います。
もちろん、介護の仕事の大変さは、働く施設や仕事内容によっても変わります。
例えば、特別養護老人ホームでは身体介助が多く、体力的にも大変だと感じることがあります。
一方で、デイサービスでは付き添いや体操、レクリエーションなどが中心になることもあり、夜勤がなく日中だけ働ける環境もあります。
訪問介護でも、勤務日数や時間を調整しながら、短時間で働ける求人があります。
このように、介護にはさまざまな仕事や働き方があります。
だから私は、介護を始めるなら「介護職として長く同じ仕事を続ける」ことだけを考えなくてもいいと思っています。
実際に働いてみて、自分には何が合うのかを知り、合わなければ別の施設や働き方を探していけばいいのです。
大切なのは、自分に合わない場所で無理をして働き続けないことです。
介護の仕事だからといって、すべての職場が同じではありません。
仕事内容も、利用者さんとの関わり方も、勤務時間も、職場の雰囲気も違います。
最初は慣れるまで大変でも、働きながら自分に合う場所を探していけることは、介護の仕事の一つのメリットだと私は感じています。
また、介護の仕事を一度経験しておくと、将来、家族の介護が必要になったときにも、知識や経験が役に立つことがあります。
50代になって仕事を辞めた人や、やむを得ず仕事を離れた人の中には、「これから何をして働けばいいのだろう」と不安になる人もいると思います。
もちろん、サービス業やレジ、軽作業など、選べる仕事はいろいろあります。
ただ、50代以降は、これまでと同じように仕事を探せるとは限りません。
だからこそ、介護を「この先も働くための選択肢の一つ」として知っておくことには意味があると思います。
実際にやってみて自分に合わなければ、別の仕事を選べばいい。
でも、一度経験しておけば、仕事が見つからなくて困ったときに、もう一つの選択肢として考えることができます。
介護職は、最初から楽な仕事ではありません。
50代で未経験から始めるなら、覚えることも多く、仕事に慣れるまでは大変だと感じることもあるでしょう。
それでも、介護にはさまざまな働き方があり、実際に働いてみなければ分からないこともたくさんあります。
そこでここからは、50代未経験で介護の仕事を始めた私が、実際にきついと感じたことを7つ、そして50代未経験でも介護を始められる理由について紹介します。
「介護職はきつい」と言われる理由は何なのか、自分に続けられそうな仕事なのかを考えながら読んでみてください。
シフト制で生活リズムが変わる
介護職で「きつい」と感じる理由の一つに、シフト制があります。
24時間体制の施設では、早番・日勤・夜勤など、勤務時間が分かれていることが多く、例えば、
・7時〜16時
・10時〜18時
・17時〜翌9時
など、勤務時間が変わります。
しかも、これが毎日同じではなく、シフトによってバラバラになることがあります。
時間帯が変わる仕事をしてきた人なら、それほど気にならないかもしれません。
でも、これまでずっと同じ時間帯で働いていた人にとっては、「明日は何時からだっけ?」と毎日のように勤務時間を確認すること自体が、意外とストレスになります。
私自身もこのシフト制が合わず、仕事から帰ると「明日は朝からだっけ……」と気になることがありました。
そこで、固定に近い勤務時間で働ける求人を探し直したところ、このストレスはかなり減りました。
また、夜勤は体力的にも生活リズム的にも負担を感じる人がいるため、夜勤専従の求人もあります。
夜勤を避けたいのであれば、デイサービスのように日中の勤務が中心の職場を選ぶ方法もあります。
施設によっては、日勤のみの求人や勤務時間をある程度固定できる求人もあるので、応募する前に勤務時間や夜勤の有無を確認しておくことが大切です。
また、人手が不足している職場では、シフト確定後に変更が入ることもあります。
予定を立てにくいこともあるため、勤務時間だけでなく、シフトの決まり方や変更の頻度について確認しておくと安心です。
介護職だからといって、必ず不規則なシフトで働かなければならないわけではありません。
自分にとって負担の少ない勤務時間や働き方を選ぶことも、介護を長く続けるためには大切なことです。
覚えることが多く、50代には記憶の負担がある
新しい仕事なら、どんな職種でも最初は覚えることがたくさんあります。
でも、介護の仕事は特に覚えることが多く、そのうえ「覚えていないこと」が安全に関わる場面もあるため、私はかなり脳を使う仕事だと感じています。
まず覚えなければならないのが、利用者さんの名前です。
同じ苗字の方がいたり、年齢や雰囲気が似ていたりすると、最初はなかなか覚えられません。
でも、名前を間違えてしまったり、利用者さんごとの注意点を把握できていなかったりすると、介助や服薬に関する確認などでミスにつながる可能性があります。
利用者さんは一人ひとり状態が違います。
どこに痛みがあるのか、どんな動きに注意が必要なのか、どんな声かけが必要なのか。
さらに、その人に合わせた介助方法や、施設ごとの仕事の進め方も覚えていかなければなりません。
つまり、単に「名前を覚えれば終わり」ではなく、一人ひとりの特徴や注意点を覚えながら、仕事そのものも同時に覚えていく必要があります。
私は最初、メモ帳に利用者さんの特徴や対応方法を書き、時間があれば何度も見返して覚えていました。
それでも、覚えるまでの数か月はかなり大変でした。
しかも、この大変さは未経験者だけのものではありません。
ベテランの介護士でも、新しい施設へ転職すれば、利用者さんの名前や特徴、施設ごとのルール、介助方法などを一から覚える必要があります。
だから、介護では「覚えることが苦手だから自分には無理」と最初から決めつける必要はないと思います。
ただ、ここで気をつけたいのが職場選びです。
介護は忙しい職場も多く、未経験者に十分な説明をする余裕がないところもあります。
私は、分からないことを教えてもらえないまま介助を任される職場は、できれば避けた方がいいと思っています。
教えてもらえないまま行う介護は、働く側にとっても怖いものです。
利用者さんの安全にも関わることなので、「忙しいから見て覚えて」ということが当たり前になっている職場は、未経験者にとって負担が大きいでしょう。
一方で、利用者さんの人数が少なく、一人ひとりとじっくり関われる職場を選ぶという方法もあります。
例えば、訪問介護のように一対一で関わる仕事や、少人数の利用者さんを担当するグループホームなど、自分に合う環境を探してみるのも一つの方法です。
「覚えることが多いから介護は無理」と考えるのではなく、自分が覚えやすい人数や仕事内容の職場を選ぶことも、長く働くためには大切です。
最初の数か月は大変でも、少しずつ利用者さんのことが分かり、仕事の流れが見えてくると、頭の中にあった情報がつながっていきます。
私自身も、最初は何もかも覚えられないように感じましたが、少しずつ「この人はこうすればいい」と分かるようになっていきました。
未経験なので仕事そのものに慣れるまで大変
これは介護に限ったことではありませんが、未経験の仕事を始めると、最初は覚えることも多く、仕事そのものに慣れるまでが大変です。
特に転職して業種まで変わるとなると、それまで経験したことのないことばかりで、「何をすればいいの?」と戸惑うことも多いでしょう。
介護も同じです。
例えば、利用者さんの横を歩いて介助するだけでも、
「この人は右側に麻痺があるから、右側について支えた方がいい」
「車椅子はどちら向きに動かせばいいんだっけ?」
など、最初は一つひとつ考えながら動かなければなりません。
頭では分かっていても、実際の現場では利用者さんによって状態が違うため、最初はパニックになることもあります。
でも、介護の仕事には一つ良いところがあります。
それは、一度身につけた介助の知識や技術、利用者さんへの接し方が、次の職場でも活かせることです。
もちろん、施設が変わればルールや仕事の進め方は変わります。
それでも、「なぜこの位置で支えるのか」「なぜこの向きにするのか」といった基本を理解していれば、別の場所でも応用できます。
私自身も、最初は一つひとつ確認しながら動いていました。
でも、経験を重ねるうちに、「この場合はこうする」ということが少しずつ体に染みつき、以前ほど考えなくても自然に動けるようになっていきました。
この経験は、単なる「その職場で働いた経験」ではありません。
自分の中に残るスキルになるので、親の介護にも役立ちます。
さらに介護は、一つの仕事だけでなく種類が多岐に及ぶためさまざまな働き方ができます。
施設介護だけでなく、デイサービスや訪問介護など、自分が身につけた知識や経験を活かしながら、別の仕事を選んでいくこともできます。
今後、転職し業種そのものを変えてしまえば、また一から覚え直すことになります。
でも介護の場合は、基本的な知識や技術を身につけておくことで、その経験を活かしながら自分に合う仕事を探していけるのです。
最初は大変でも、そこで身につけた経験が次の仕事につながっていく。
50代から仕事を変えると、「この先も仕事が見つかるだろうか」「新しい仕事を覚えられるだろうか」と、不安になることもあると思います。
だからこそ、一度身につけた介護の知識や技術を、その後も別の職場や働き方で活かしていけることは、大きな意味があります。
今の職場だけでしか使えない経験ではなく、これから先も働くための土台になる。
そう考えると、50代から未経験で始める介護の仕事は、最初は大変でも、その先の仕事の選択肢を増やしてくれる一つの経験になるのではないでしょうか。
人を支える仕事なので腰や体力に負担がある
介護に限らず、力が必要な仕事は疲れやすく、体力も必要です。
介護では、人の体を支えたり移動を介助したりするため、腰や足などに負担がかかることがあります。
介護には、介助する側とされる側の両方になるべく負担をかけず、少ない力で介助する基本の型があります。
ただ、実際の現場では、いつでもその通りにできるとは限りません。
危ない場面ではとっさに支えることもありますし、狭い場所では思うような姿勢が取れないこともあります。
だからこそ、普段から無理な姿勢で介助しないことや、最初に基本の介助方法は身につけておくことが大切です。
そのうえで、「どうすれば自分の体への負担を少なくできるか」を考えながら介助する必要があります。
介護の仕事は、力がある人だけができる仕事でもありません。
仕事内容は施設によってかなり違います。
身体介助が多い特別養護老人ホームなどもあれば、デイサービスのように、身体介助の量が比較的少ない働き方もあります
年齢を重ねてから介護を始める場合は、最初から「介護職ならどこでもいい」と考えるのではなく、自分の体力や体の状態に合った仕事を探すことも大切です。
無理をして働き続けて体を壊してしまえば、仕事を続けることもできなくなってしまいます。
「自分にはどのくらいの身体介助ならできるのか」を考えながら、自分に合う職場や働き方を選んでいく。
それも、介護を長く続けるために大切なことだと思います。
命を預かる責任があり、精神的に疲れる
どんな仕事でも、失敗しないように気を使う場面はあります。
でも、介護は人の体を直接扱う仕事なので、ちょっとした判断や見落としが、けがや事故につながることがあります。
体が思うように動かない方や、認知症などによって自分の行動を十分に判断できない方もいるため、さっきまで座っていた人が突然立ち上がったり、歩こうとしたりすることもあります。
そのため、介護では「今は大丈夫だから」と思っているだけではなく、「このあと何が起こるか」を考えながら見ておく必要があります。
実際に転倒などの事故が起こることもあり、その場合は事故報告書を書いたり、施設の対応に沿って必要に応じて家族への連絡などを行ったりすることもあります
もちろん、予測できないこともあるため、すべての事故を完全に防ぐことはできません。
それでも、防げることはできるだけ防ぎ、もし起きてしまっても被害を最小限にするために、常に利用者さんの様子を気にしながら仕事をする必要があります。
私は以前、介護の「見守り」は、見ているだけに見えて実は一番しんどい仕事だと言われたことがあります。
実際にやってみると、その意味がよく分かります。
ただ見ているのではなく、
「今、いつもと違う動きをしていないか」
「この人は立ち上がりそうではないか」
「この状態なら次に何が起こるか」
と、常に考えながら見ているからです。
最初の頃は、そのすべてを気にしなければならないので、かなり疲れます。
でも、経験を積んでいくと、その人の身体の状態や動きの特徴が少しずつ分かってきます。
「この人はここを気をつけよう」
「この麻痺があるから、こういう動きには注意しよう」
など、危険になりやすいポイントが見えてくるようになります。
そうすると、最初の頃のようにすべてに神経を使うのではなく、注意するべきところを意識して見られるようになっていきます。
それでも、人を相手にする仕事である以上、常に一定の緊張感はあります。
荷物なら落としてしまっても、買い直したり修理したりできることがあります。
でも、人は一度大きなけがをすると、その後の生活そのものが変わってしまうことがあります。
だからこそ、介護には精神的な疲れがあるのだと思います。
一方で、この仕事には、それだけ大きな「よかった」と感じられる瞬間もあります。
転倒しそうな場面を事前に防げたとき。
その人がけがをせず、いつも通り元気に過ごせたとき。
そして、介助のあとに「ありがとう」と言ってもらえたとき。
何も起こらなかったことは、目立つ成果ではありません。
でも、事故を防ぎ、その人が安全に一日を過ごせたということ自体が、介護の仕事では大きな意味を持っています。
大変で気を使う仕事だからこそ、人とのふれあいや「無事に過ごせた」という喜びも大きい。
そこに、介護という仕事のやりがいがあるのだと思います。
人間関係や利用者さんとの関わりにも難しさがある
仕事をするうえで、職場の人間関係の難しさはついて回ります。
これは介護に限らず、どんな仕事にもあることです。
ただ、介護は人の安全や生活に関わる仕事なので、忙しい職場ほど職員に余裕がなくなり、ピリピリした雰囲気になることもあります。
「まだ終わっていないの?」
「仕事が遅い」
「まだ覚えていないの?」
など、忙しさから職員同士で不満が出ることもあります。
特に未経験で入ったばかりの頃は、何をするにも時間がかかります。
自分では一生懸命やっていても、周りから見ると仕事が遅く見えることもあります。
そんな中で、十分に教えてもらえないまま注意ばかりされると、「自分には介護は向いていないのかもしれない」と思ってしまうこともあるでしょう。
でも、ここで覚えておきたいのは、職場の人間関係が大変だからといって、介護の仕事そのものが向いていないとは限らないということです。
施設によって職員の年齢層や雰囲気、教育の仕方はかなり違います。
同じ介護の仕事でも、丁寧に教えてくれる職場もあれば、新人が質問しにくい雰囲気の職場もあります。
そのため、「人間関係が合わない」と感じたときには、自分を責めるだけでなく、職場そのものが自分に合っているのかを考えることも大切です。
そして、もう一つ介護ならではの難しさがあります。
それが、利用者さんとの関わりです。
介護は、利用者さんと毎日、継続的に関わる仕事です。
もちろん、性格が合う人もいれば、どうしても苦手だと感じる人もいます。
中には、文句が多かったり、こちらに強い言葉をぶつけてきたりすることで、周囲から敬遠されてしまう利用者さんもいます。
そんなとき、感情のまま受け止めてしまうと、「この人、嫌だな」という気持ちだけが残ってしまいます。
でも、少し視点を変えてみると、見え方が変わることがあります。
高齢になれば、それまでの人生や性格が、その人の言葉や行動に表れることもあります。
また、施設で暮らしている方の中には、自分の希望だけで今の生活を選んでいるわけではない人もいます。
「好きでここにいるわけではないのかもしれない」
「何か不安や不満を抱えているのかもしれない」
「なぜ、この人はこういう態度を取るのだろう」
そう考えてみると、表面に出ている言葉だけが、その人のすべてではないことに気づくことがあります。
もちろん、だからといって嫌なことをすべて我慢する必要はありません。
ただ、「嫌な人」と決めつけるのではなく、その人の背景や性格、これまでどんな人生を送ってきたのかを少し想像してみる。
そして、「どう声をかければこの人は落ち着くのだろう」「こういう接し方なら少し変わるかもしれない」と考えてみる。
それだけでも、自分の気持ちの持ち方が変わることがあります。
私自身も、感情をそのまま受け取るのではなく、「なぜこの人はこんな態度を取るのかな」と少し離れたところから見るようにすると、嫌な気持ちを引きずりにくくなりました。
これは介護の仕事だけでなく、普段の人間関係にも役立つ考え方だと思います。
一方で、利用者さんとの関わりには、うれしいこともあります。
気の合う利用者さんから、これまでの人生や昔の話を聞かせてもらったり、その人との会話自体が楽しみの一つになっていたりすることもあります。
「ありがとう」と言ってもらえることもあれば、何気ない会話から自分自身が人生について考えさせられることもあります。
介護は、人と深く関わる仕事だからこそ、大変な場面もあります。
でも、その分、人との向き合い方を考える機会も多い仕事です。
すべてを真正面から受け止めて、自分の心まで疲れさせないこと。
相手の言葉や態度を100%自分への攻撃だと受け取るのではなく、「この人はなぜこうしているのだろう」と一歩引いて見ること。
それも、介護を長く続けていくためには大切なことだと思います。
記録やタブレット入力など、介護以外の作業もある
介護の仕事というと、利用者さんの介助が中心だと思うかもしれません。
でも実際には、記録を書く作業もかなり多い仕事です。
今まで事務などでパソコンを使っていた人には、それほど苦にならないかもしれません。
一方で、50代の方からよく聞くのが、タブレットに利用者さんの記録を入力する作業が、慣れるまで苦痛に感じるという話です。
利用者さんの様子や介助の内容などを、タブレットに入力する施設もあります。
介助の合間に記録を入力しなければならないため、仕事に慣れていないうちは、「介助を覚えるだけでも大変なのに、記録まであるの?」と負担に感じることがあります。
ただ、タブレットの操作自体は、それほど難しいものではありません。
何度も使っているうちに慣れてくるので、最初の戸惑いさえ乗り越えれば、それほど心配する必要はないと思います。
逆に、記録を電子化していない施設もあります。
「紙なら簡単そう」と思うかもしれませんが、紙には紙の大変さがあります。
書類を管理したり、必要な情報を探したりする手間があるからです。
電子化にも紙にも、それぞれ良いところと大変なところがあります。
どちらが働きやすいかは人によって違いますが、電子化に慣れていない人は、最初は少し負担に感じるかもしれません。
50代未経験で介護を始めるなら、利用者さんの介助だけではなく、こうした記録業務も仕事の一部だと知っておくと、実際に働き始めてからのギャップを減らせると思います。
50代未経験でも介護の仕事は始められる?
ここまで読むと、「介護はやっぱり大変そう」と感じるかもしれません。
でも、私は50代からでも介護の仕事を始めることには十分意味があると思っています。
介護の仕事は、年齢だけを理由に選択肢から外す必要はありません。
実際、介護分野では今後も多くの人材が必要とされており、厚生労働省も介護未経験者が介護の仕事を知り、働き始めるための取り組みを進めています。
むしろ50代から始めるからこそ、この先の仕事の選択肢を増やすという考え方もできます。
例えば、50代で介護の仕事を始めて経験を積めば、その後も介護の知識や技術を活かして別の職場や働き方を探すことができます。
施設を変えることもできますし、身体介助の多い仕事から、比較的身体への負担が少ない仕事へ移ることもできます。
最初は現場で利用者さんの生活を支える仕事を経験し、そこから自分に合った働き方を探していくこともできるのです。
介護の仕事を続けていく中で、経験を活かして新人を教えたり、介護の知識を伝えたりする側に回ることもあります。
もちろん、すべての人が同じ道を進むわけではありません。
それでも、50代から身につけた知識や経験が、その職場だけで終わらず、その先の仕事にもつながっていく可能性があることは、介護の大きな魅力だと思います。
また、50代は利用者さんのお子さん世代に近いことも多く、親世代との関わりを経験している人なら、その感覚がコミュニケーションに活かせることもあります。
若い人には「孫」のように感じて話しにくいことでも、子どもと近い年齢だからこそ話してくれる利用者さんもいます。
もちろん、人との関係なので年齢だけですべてが決まるわけではありません。
それでも、これまで生きてきた経験が、そのまま介護の仕事に活かされる場面はあります。
そして、最初から「一生介護を続けなければいけない」と考える必要もありません。
実際に働いてみて、「介助より人の話を聞く方が合っている」と感じることもあるでしょう。
その経験をきっかけに、介護の知識をさらに深めたり、将来の資格や別の福祉の仕事を考えたりすることもできます。
介護福祉士の資格についても、一定の実務経験と実務者研修を経て国家試験を受けるルートがあります。
だから、50代で介護を始めることは、「今の仕事を見つける」というだけではありません。
これから先も働いていくために、自分の中に新しい経験やスキルを増やすことにもつながります。
もちろん、最初からフルタイムで頑張る必要もありません。
パートや短時間勤務から始めてみて、自分に合う仕事なのかを確かめる方法もあります。
一つの施設が合わなくても、別の施設では働きやすいと感じることもあります。
それでも合わなければ、介護を辞めて別の仕事を選んでもいい。
大切なのは、「一度始めたら最後まで続けなければいけない」と考えないことです。
50代から介護に関わることで、自分に合う仕事を見つけたり、この先の人生で使える経験を増やしたりできる。
そう考えると、介護は50代からでも一度挑戦してみる価値のある仕事の一つだと私は思います。
ここまで、50代未経験で介護職を始めたときに感じた「きつさ」について紹介してきました。
介護は決して楽な仕事ではありません。
でも、きつさの感じ方は、働く施設や仕事内容、勤務時間によっても変わります。
そして、これから介護を始めようと思っているなら、「実際にはどんな仕事をするのか」を知っておくことも大切です。
私が50代未経験で最初に選んだのは、介護の中でも身体介助が多い特別養護老人ホーム(特養)でした。
では、実際に特養ではどんな仕事をするのでしょうか。
ここからは、私が働いて分かった特養の仕事内容や一日の流れ、思っていたより多かった仕事について紹介します。
特養ではどんな仕事をする?|50代未経験で働いてわかった仕事内容
介護は、未経験からでも挑戦しやすい仕事の一つです。
私が50代で介護の仕事を始めるとき、介護の中でも身体的に大変だと言われることの多い特別養護老人ホーム、いわゆる「特養」を最初の働き先に選びました。
理由は、未経験だからこそ、特養ならいろいろな介助技術や経験を身につけられると思ったからです。
ところが、実際に働いてみると、想像していたのとは違うこともたくさんありました。
ここでは、私が50代未経験で特養に入り、実際にどんな仕事をしたのか、働いてみて分かったことや、失敗だったと感じたことも含めて紹介していきます。
特養で行う主な仕事
特別養護老人ホーム、いわゆる「特養」は、日常生活を自宅で続けることが難しくなった高齢者が生活する施設です。
新たに入所する人は原則として要介護3以上で、介護の必要度が高い方が多いのが特徴です。
ただし、要介護1・2でも、やむを得ない事情によって在宅での生活が難しい場合には、特例として入所できる仕組みがあります。
そのため、特養の介護職は、利用者さんの「施設での生活そのもの」を支える仕事が中心になります。
家で暮らしていれば、自分で起きて、顔を洗って、着替えて、食事をして、トイレに行き、お風呂に入り、夜になれば眠るという生活があります。
特養では、その一つひとつに介助が必要な方もいます。
例えば、
・起床時の着替えや整容
・食事の準備や食事介助
・服薬に関する準備や確認など、施設のルールに沿った対応
・トイレやおむつ交換などの排泄介助
・ベッドから車椅子への移乗
・歩行や車椅子での移動介助
・入浴や着替えの介助
・歯磨きなどの口腔ケア
・就寝時の介助
・利用者さんの見守りや会話
・利用者さんの様子や介助内容の記録
など、さまざまな仕事があります。
特養では、認知症が進んでいる方や、身体が思うように動かない方もいます。
食事を自分で取ることが難しい方の介助では、飲み込みの状態などにも注意が必要です。
誤嚥などにつながるリスクもあるため、利用者さんの様子を見ながら慎重に介助する必要があります。
「生活のお世話」と聞くと簡単に感じるかもしれませんが、実際には一人ひとり状態が違います。
同じ「歩く」という動作でも、自分で歩ける人、手を支えれば歩ける人、車椅子を使う人では介助方法が違います。
その人ができることはできるだけ自分でしてもらい、難しい部分を介助する。
それも特養の仕事の一つです。
では、50代未経験で入った場合、いきなりすべての仕事を任されるのでしょうか。
もちろん施設によって教育方法は違いますが、私の職場では、まず利用者さんの名前や特徴を覚えるところから始まりました。
その後、簡単な食事介助やお茶の準備、整容など、比較的取り組みやすい仕事から少しずつ教えてもらいました。
整容というのは、髪をとかしたり、入浴後に髪を乾かしたり、着替えを手伝ったりするような、身だしなみを整える介助です。
いきなり難しい身体介助を全部任されるのではなく、一つずつ仕事を覚えながら、できることを増やしていく形です。
ただ、特養は利用者さんの介護度が高く、仕事量も多いため、慣れるまではかなり大変です。
それでも、実際の生活を支える仕事を一つずつ経験していくことで、「介護とは何をする仕事なのか」が少しずつ分かってきます。
特養の仕事は、単に食事やお風呂を手伝うだけではありません。
その人が一日を安全に過ごし、できることは自分で行いながら、その人らしい生活を続けられるように支える仕事なのです。
特養では、利用者さんが施設で生活しているため、24時間、生活を支えるための仕事があります。
そのため、朝・日中・夜間・夜勤など、時間帯を分けたシフト制で職員が勤務している施設が多くあります。
また、食事の時間帯や入浴の時間帯など、忙しくなる時間に合わせて、短時間のパート職員を配置している施設もあります。
例えば、朝食や夕食の時間だけ、入浴介助の時間だけ働くような求人です。
私自身も、最初は5時間の短時間パートから始めました。
未経験だったので、いきなり長時間働くよりも、まずは仕事の流れや利用者さんとの関わり方を覚えることを優先したかったからです。
このように、介護の仕事は「フルタイムで働く」という方法だけではありません。
24時間体制の施設ではさまざまな勤務時間がありますが、自分の生活や体力に合わせて、短時間から始められる仕事があるのも介護の特徴の一つです。
では、実際に特養で働くと、一日の中でどのように仕事をしていくのでしょうか。
勤務時間によって担当する仕事も変わります。
ここからは、早番・日勤・夜勤など、特養で働く介護職の一日の流れを紹介します。
介護職の一日の流れ
特養の介護職は、利用者さんの一日の生活に合わせて、その時々に必要な介助をしていくのが主な仕事です。
勤務時間によって担当する内容は変わりますが、例えば早番なら、
・起床介助
・トイレ介助
・整容や着替え
・朝食介助
・排泄介助や水分補給
・入浴介助
・昼食介助
・排泄介助
・おやつの準備や介助
・夕食の準備
など、朝から夕方まで利用者さんの生活に合わせて仕事をしていきます。
日勤になると起床介助がない代わりに、夕食の準備や夕食介助まで担当することがあります。
夜勤では、夕食介助から始まり、就寝介助、夜間の見回り、必要な方の排泄介助や体位交換、朝の起床介助、朝食介助までを担当します。
このように、勤務時間によって担当する内容は違いますが、利用者さんの生活の流れに沿って介助をしていくことは共通しています。
さらに、介助だけをしているわけではありません。
仕事の合間には、
・利用者さんの様子や介助内容の記録
・職員同士の申し送り
・家族との面会対応
・会議や打ち合わせ
・居室や共有スペースの片付け
・掃除や環境整備
などの仕事もあります。
また、介助をしながら「いつもと様子が違わないか」を確認することも大切です。
食事の量が少ない、歩き方が違う、元気がないなど、小さな変化に気づいたら、記録したり、必要に応じて他の職員に伝えたりします。
そのため、特養の一日は「決められた仕事を順番にこなす」というより、利用者さんの様子を見ながら、その日の状況に合わせて動いていくことが多いです。
最初はやることが多く、次に何をすればいいのか分からなくなることもあります。
でも、毎日の流れを覚えていくと、「この時間は食事」「その後は排泄介助」「次は入浴」と、少しずつ先の動きが見えるようになってきます。
勤務する施設や担当する利用者さんによって一日の流れは変わりますが、特養では、利用者さんが朝起きてから夜眠るまでの生活を支えることが、介護職の大きな役割なのです。
そして、実際に働いてみると、「介助以外にもこんな仕事があるのか」と思うことも少なくありませんでした。
次は、私が特養で働いてみて、思っていたより多かった仕事や意外だった仕事について紹介します。
思っていたより多かった仕事・意外だった仕事
特養で働いてみて、私が思っていたより多いと感じたのが、食事に関わる仕事です。
食事は1日に3回ありますが、単に利用者さんの食事を介助するだけではありません。
例えば、
・全員分のお茶を用意する
・配膳をする
・食後のコーヒーなどを準備する
・服薬に関する準備や確認をする
・歯磨きの準備や入れ歯を用意する
・食後の食器を片付ける
・コップや歯ブラシなどを洗浄する
・エプロンなどを準備する
など、食事の前後にもさまざまな仕事があります。
こうした準備や片付けも、利用者さんが気持ちよく食事をするために必要な仕事です。
そのため、施設によっては、介護職だけでなく、無資格の補助スタッフや短時間のパート職員などが、食事の準備や片付けを中心に担当することもあります。
特養では、食事の時間帯だけ働く短時間の求人を見かけることもあります。
「介護の仕事をしてみたいけれど、いきなり身体介助は不安」という人にとっては、こうした仕事から介護の現場を知るという方法もあります。
また、私が意外に感じたのは、身体介助以外の仕事もかなり多かったことです。
施設によって違いはありますが、季節のイベントの準備や体操を行ったり、利用者さんの家族に普段の様子を伝えるための掲示物や文章を作ったりすることもありました。
さらに、正社員やフルタイムで働くようになると、利用者さんごとの担当を受け持ったり、記録や書類の作成をしたり、研修に参加したりと、事務的な仕事も増えていきます。
私は実際に働いてみて、「介護職は利用者さんの介助をする仕事」というイメージがかなり変わりました。
介助だけではなく、食事の準備や片付け、記録、書類、イベントの準備など、利用者さんの生活を支えるために必要な仕事を幅広く行います。
思っていたよりも、やることが多い。
これも、50代未経験で介護の仕事を始めるなら、最初に知っておきたい現実の一つだと思います。
ただ、仕事が多くて大変だからといって、それだけで介護を続けられないわけではありません。
私自身、実際に働き続ける中で、少しずつ「介護をやっていてよかった」と思えることも増えていきました。
ここからは、50代未経験で始めた私が、それでも介護の仕事を続けられている理由を紹介します。
それでも50代未経験で介護を続けられている理由
介護職は、思っていたよりやることが多く、体力も精神力も使う仕事です。
短時間のパートでも、仕事が終わって家に帰ると、ぐったりしてしまうことがあります。
特に50代で未経験から始めると、覚えることも山のようにあり、最初の数か月はかなり大変だと感じる人もいると思います。
それでも私が介護の仕事を続けている理由の一つは、いろいろな利用者さんと関わることが、だんだん楽しくなってきたからです。
私はもともと、人と話すことがそれほど得意ではありません。
「何を話そう」と考えてしまうこともあります。
それでも仕事を続けているうちに、気軽に話しかけてくれる人や、自分から話しかけやすい人が少しずつ増えてきました。
最初は緊張していた人とも、何度も顔を合わせているうちに、その人の性格や好きなことが分かってきます。
すると、
「今日は元気かな」
「今日は何を話そうかな」
と、その人に会うことが仕事のちょっとした楽しみになってくることがあります。
もちろん、すべての利用者さんと気が合うわけではありません。
性格が合わない人もいますし、対応が難しいと感じることもあります。
でも、そんな中でも「この人、なんだか好きだな」「会うと嬉しいな」と思える人が少しずつできてきます。
「また明日待ってるよ」と声をかけてもらったり、こちらが話しかけると笑顔を見せてくれたりすると、「今日も来てよかった」と思えるのです。
特に私が介護の仕事で面白いと感じるのは、介助だけではなく、声のかけ方や関わり方によって、その人の反応が変わることがあるところです。
普段はあまり愛想を見せない人が、自分には笑顔を見せてくれたり、会話が少なかった人が少しずつ話してくれるようになったりすることがあります。
認知症などで会話がかみ合わないことがあっても、その人なりの話を聞いていると、思わず笑ってしまったり、こちらまで楽しくなったりすることがあります。
「ありがとう」と言ってもらえることも、もちろん嬉しいです。
でも、私が介護の仕事で嬉しいと感じるのは、それだけではありません。
「この人にとって、自分が少しでも心地よい時間をつくれているのかもしれない」
そう思える瞬間があることです。
介護は、身体の介助をするだけではありません。
不安そうな人に声をかけたり、寂しそうな人の話を聞いたり、その人が少し笑えるような関わりをしたり。
そんな小さなことでも、その人の一日を少し良くできることがあります。
人付き合いや会話が得意ではない私でも、仕事を続けるうちに「この人とは話しやすいな」と思える人が増えてきました。
それが、疲れて帰る日にも「また行こう」と思える理由の一つになっています。
介護は大変な仕事です。
でも、いろいろな人生を歩んできた人と毎日関わることで、自分の知らなかった考え方や生き方に触れることができます。
そして、その中で自分なりの関係ができていく。
人と関わることが、介護という仕事の大変さの中にある大きな醍醐味なのかもしれません。
もちろん、ここまで読んで「人と関わるのが楽しくても、仕事そのものをどうやって覚えていけばいいの?」と思う人もいるでしょう。
私も最初からうまくできたわけではありません。
最初はできないことがたくさんありましたが、少しずつ仕事を覚えていくことで、利用者さんとの関わり方にも余裕が出てきました。
次は、50代未経験で介護を始めた私が、最初の頃にどうやって仕事に慣れていったのかを紹介します。
最初はできなくても少しずつ慣れていく
どんな仕事でも、最初から何でもできる人はいません。
介護も同じで、経験のある人に聞いてみると、「最初はできなかった」と話す人もいます。
それが何年も経験を積んでいくうちに、利用者さんの状態を見て先回りして動けたり、いろいろな介助を自然にこなせたりするようになっていきます。
ただ、最初の頃はできないことが多いので、「またできなかった」と疲れたり、うんざりしたりすることもあります。
でも、続けていると、ある日ふと「前はできなかったことができるようになっている」と気づくことがあります。
任される仕事が増えたり、以前なら先輩に確認していたことを、自分で考えて動けるようになったりすることもあります。
いきなり何でもできるようになる必要はありません。
例えば、
「今週は、この利用者さんのトイレ介助を一人でできるようにする」
「今週は、車椅子への移乗を覚える」
など、小さな目標を一つ決めてみるのもおすすめです。
何ができないのか、どこが難しいのかが分かれば、そこを意識して覚えることができます。
反対に、ただ毎日忙しさに追われているだけだと、「今日も終わった」で一日が終わってしまい、自分が何を覚えたのか、どこが苦手なのか分からないままになることもあります。
私自身も、最初の頃は「なぜこうするのだろう?」と考えながら介助するようにしていました。
「なぜここに立つのか」
「なぜこの向きにするのか」
「どうすれば利用者さんにも自分にも負担が少ないのか」
そうやって理由を考えながらやっていると、少しずつ、頭で考えなくても体が自然に動くようになってきます。
介護は、経験を積まなければ身につかないことがたくさんあります。
だからこそ、最初から全部を覚えようとするのではなく、一つずつ確実に身につけていくことが大切です。
分からないことがあれば、その都度聞く。
苦手なことがあれば、そこを意識して練習する。
そして、「なぜこうするのか」を考えながら仕事をする。
そうやって一つずつ積み重ねていくことが、結果的に仕事を覚える近道になるのだと思います。
最初は「こんなこともできない」と思っていたことが、気づけば当たり前にできるようになる。
その変化を感じられることも、仕事を続ける楽しさの一つです。
そして、50代から介護を始めるなら、これまでの人生で身につけてきたものも、決して無駄ではありません。
次は、50代だからこそ活かせる経験について紹介します。
50代だからこそ活かせる経験もある
50代で未経験から介護を始めると、介助の技術では若い人や経験者にかなわないと感じることもあるかもしれません。
でも、介護の仕事で必要なのは、介助の技術だけではありません。
50代だからこそ、これまでの人生経験を活かせる場面がたくさんあります。
例えば、利用者さんの子ども世代と近い年齢だからこそ、親を思う気持ちや、子どもの立場からの考え方を想像しながら話せることがあります。
昭和の頃の話で盛り上がったり、昔の仕事や暮らし、家族の話を聞いたりすることもあります。
利用者さんの中には、自分の親と重ねてしまうような人もいます。
「親だったら、こんなときどうしてほしいだろう」
そんなふうに考えることで、少し先回りして声をかけられることもあります。
また、特別な介護技術でなくても、これまでの生活の中で身につけてきた気遣いが役立つこともあります。
「季節の変わり目だから体調に気をつけよう」
「今日は少し寒そうだから、もう一枚羽織った方がいいかな」
「髪が乱れているから整えた方が気持ちいいかもしれない」
こうした、日常生活の中で自分が自然にしていることが、そのまま利用者さんへの気遣いや声かけにつながります。
介護というと、高齢者のお世話をイメージする人が多いかもしれません。
でも、介護の経験を活かせる仕事は高齢者施設だけではありません。
障害福祉の分野にも、人を支える仕事があります。
子ども世代くらいの利用者さんから「お母さん」のように慕われることもあり、これまでの人生経験が、そのまま人との関わりに活きることがあります。
若い人には若い人の良さがありますが、50代だからこそ出せる安心感や、相手を急かさずに見守る感覚もあります。
「50代未経験だから不利」と考えるだけではなく、これまで生きてきた経験そのものが、介護や人を支える仕事に活かせることもあるのです。
50代未経験だと、介助の技術はまだまだこれからです。
でも、会話をすることや相手を気遣うこと、その人を大切に扱うことは、今まで生きてきた経験をすぐに活かせる部分でもあります。
介助は、ただ早く終わらせればいいというものではありません。
もちろん、時間に追われる現場では、効率よく動くことも必要です。
それでも、焦って早くしようとするあまり、利用者さんに不安な思いをさせたり、事故につながったりしてしまえば、本来の介護から離れてしまいます。
・相手の気持ちを考えながら動くこと。
・安心できるように声をかけること。
・その人を一人の人として大切に扱うこと。
これも介護の大切な仕事です。
最初は「何もできない」と感じるかもしれません。
でも、50代未経験だからといって、何も持っていないわけではありません。
これまでの仕事や子育て、家族との関わり、日々の暮らしの中で身につけてきた経験の中にも、介護で使えるものはたくさんあります。
まずは、自分がすでに持っているものを見つけて、できることから使ってみる。
そして、足りない介助技術は、仕事をしながら少しずつ身につけていけばいいのです。
「早く上手にできること」だけを目標にするのではなく、自分なりの良さを活かしながら、その人にとって安心できる介護ができる人を目指す。
それも、50代から介護を始める一つの強みになるのではないでしょうか。
そして、仕事を覚えてできることが増えてくると、ただ介助をこなすだけではなく、「この人にとって何が一番いいのだろう」と考える余裕も少しずつ生まれてきます。
できないことができるようになると仕事の見え方が変わる
介護の仕事は、できないことができるようになるほど、少しずつ仕事の見え方も変わってきます。
未経験の頃は、次に何をすればいいのか分からず、目の前のことで精一杯です。
「この人の介助をして、その次は何だっけ?」と考えているうちに時間が過ぎてしまい、利用者さんの気持ちまで考える余裕がないこともあります。
まずは仕事を覚えて、安全に介助できるようになること。
それだけでも、最初の頃は大きな目標です。
そして、介助に慣れてくると、今度は「早くできること」も大切になってきます。
例えば排泄介助などは、利用者さんにとっても、長く待たされるよりスムーズに終わるほうが負担は少ないでしょう。
でも、早くできることと、その人にとって心地よい介助が同じとは限りません。
歩行介助でも、忙しいときや慣れている職員ほど、つい早く歩いてもらおうとしてしまうことがあります。
でも、実際には「もう少しゆっくり歩きたい」と、利用者さんが小さな声で教えてくれることもあります。
そんなとき私は、介助とは単に早く終わらせることではなく、その人に合わせて、その人が安心できるように支えることなのだと感じます。
今は動画などで、介助方法を学ぶこともできます。
正しい姿勢や動かし方を知ることはもちろん大切です。
でも、「この人にとってはどうしたらいいのだろう」と考えることは、動画を見るだけでは身につきません。
実際にその人と関わり、様子を見て、自分で気づいていくものです。
仕事に慣れると、最初は一つひとつ考えていたことが自然にできるようになります。
それは良いことですが、一方で、慣れによって介助が流れ作業のようになってしまうこともあります。
時間に追われていると、声をかけることも少なくなり、「とにかく早く終わらせよう」となってしまうこともあるでしょう。
だからこそ、できるようになったときには、もう一度その人を見てほしいと思います。
例えば、美容院に行ったときのことを考えてみてください。
こちらの希望をきちんと聞いてくれて、丁寧に対応してもらえたときと、忙しさのあまりほとんど声をかけてもらえず、流れ作業のように終わったときでは、同じ時間でも感じ方は大きく違うと思います。
介護も同じではないでしょうか。
「どっちがいいですか?」と本人に選んでもらう。
「今日はゆっくりしますか?」と声をかける。
少し寒そうなら、もう一枚羽織るか聞いてみる。
そんな小さな気遣いでも、「自分のことをちゃんと見てくれている」と感じてもらえることがあります。
未経験で何もできないうちは、まず安全に介助することで精一杯でも構いません。
でも、少しずつできることが増えてきたら、ぜひ「この人にとって安心できる介助はどんなものだろう」と考えてみてほしいと思います。
できるようになったら終わりではなく、できるようになったからこそ、その人を思った介助を考えられるようになる。
その小さな思いやりは、こちらが思っている以上に利用者さんに伝わっていることがあります。
それも、私は立派な介助の一つだと思っています。
ただ、介護の仕事を覚えてできることが増えても、どんな職場でも無理なく働けるとは限りません。
勤務時間や夜勤の有無、身体介助の多さ、利用者さんとの関わり方、職場の雰囲気などによって、働きやすさは大きく変わります。
だからこそ、50代から介護を始めるなら、「介護の仕事ができるか」だけではなく、**「自分に合う働き方なら続けられるか」**を考えることも大切です。
介護職は仕事内容だけでなく、自分に向いているかどうかも気になるところです。
実際に働いて感じた、介護職に向いている人・向いていない人の特徴については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
50代から介護職を始めるなら、自分に合う働き方を選ぶ
50代未経験で介護の仕事を始めると、覚えることの多さや体力面など、不安になることもあると思います。
でも、だからといって、無理をして自分に合わない職場で働き続ける必要はありません。
特に、仕事を教えてもらえない、忙しすぎて新人を育てる余裕がないなど、「ここでは続けるのが難しい」と感じる職場に無理して居続けることはおすすめしません。
介護の仕事は、最初からフルタイムや正社員で働かなければならないわけでもありません。
短時間のパートから始めることもできますし、勤務日数や時間を調整しながら、自分に合う働き方を探すこともできます。
私自身も、最初は短時間パートから介護を始めました。
いきなり一つの職場で長時間働くのではなく、実際に働きながら、介護の仕事が自分に合うのか、どんな働き方なら続けられるのかを確かめたかったからです。
同じ特養でも、施設が変われば仕事内容の細かなやり方や職場の雰囲気はかなり違います。
「特養だからきつい」「介護だから大変」と一括りにはできません。
働く時間帯、夜勤の有無、身体介助の多さ、職場の雰囲気などによっても、負担は変わります。
だからこそ、50代から介護を始めるなら、「介護の仕事が自分にできるか」だけではなく、**「どんな働き方なら無理なく続けられるか」**を考えてみてほしいと思います。
ここからは、介護職のさまざまな働き方について、私自身の経験も交えながら紹介していきます。
正社員だけが介護の働き方ではない
介護職は、同じ特養でも運営する会社が変われば、仕事の進め方だけでなく、仕事のやりやすさや設備の使いやすさも大きく違います。
そこで働くスタッフも変わりますし、利用者さんも変わります。
そのため、ずっと同じ職場にいると、そこでのやり方に疑問があっても「これが当たり前なのかな」と思うようになることがあります。
また、合わない人がいると、それだけで仕事がしんどくなることもあります。
特に特養は24時間体制でシフト制のため、毎日同じ時間帯に働けるとは限りません。早番・日勤・遅番・夜勤などがあり、予定を組みにくいと感じる人もいるでしょう。
一方で、正社員にはメリットもあります。
勤務時間が長い分、仕事を教えてもらえる機会が増えますし、会議などを通して、利用者さんの状況や施設のことを知る機会も多くなります。
ボーナスが出るかどうかなど、待遇も施設によって違うため、勤務時間や給与、社会保険、ボーナスなど、条件をよく確認したうえで「一つの職場でしっかり働きたい」という人には、正社員という働き方が向いています。
ただ、介護の仕事は正社員だけではありません。
パートや短時間勤務など、自分の生活に合わせて働く方法もあります。
社会保険についても、一定の勤務時間や条件を満たせば加入できる職場があるため、働き方を選ぶときには確認しておきたいポイントです。
一つの職場で働きながら、別の職場でも介護を経験すると、同じ介護でもやり方や考え方が違うことに気づくことがあります。
私も最初は、特養で週20時間働いて社会保険に加入しながら、訪問介護(ヘルパー)を週16時間していました。
特養と訪問介護では、仕事内容も利用者さんとの関わり方もかなり違います。
一つの職場だけを見ていると「介護とはこういうもの」と思ってしまいますが、違う職場を経験すると、別の視点から介護の仕事を見ることができます。
もちろん、将来のことを考えて社会保険をしっかりかけたい、ボーナスがある方がいいなど、正社員ならではのメリットもあります。
どちらがいいかは、その人の生活や働き方によって変わります。
私自身は、50代から未経験で介護を始めるなら、最初から正社員になる必要はなく、自分に合った施設や働き方を見つけてから正社員を考えても遅くないと思っています。
働き方を考えるときは、雇用形態だけでなく、「何時から何時まで働くのか」も大切です。
特に特養などの施設では夜勤があるため、同じ介護職でも、夜勤をするかしないかによって生活への負担はかなり変わります。
次は、夜勤あり・なしでどのような違いがあるのかを見ていきます。
夜勤あり・なしで負担は変わる
夜勤は、向いている人と苦手に感じる人が分かれやすい働き方です。
どうしても夜勤は生活リズムが逆転するため、眠れなかったり、昼間にうまく休めなかったりして、体調管理が難しくなることがあります。
また、昼間に働いている家族がいる場合は生活時間が合わなくなり、一緒に食事をしたり出かけたりする時間が減るなど、仕事以外の生活にも影響が出ることがあります。
正社員になると、仕事に慣れてきた頃から夜勤に入るようになる施設もあります。
夜勤がどうしても難しい場合は、デイサービスなど日勤のみの施設を探したり、夜勤のない正社員求人を探したりすることで対応できます。
夜勤の勤務時間は施設によって違いますが、17時頃から翌朝9時頃までなど、15~16時間程度の勤務になるところもあります。
休憩時間は1~2時間など施設によって違いますし、夜勤手当の金額もそれぞれ異なります。
「夜勤」と聞くと、夜通し忙しく働いているイメージがあるかもしれません。
実際の仕事は、夕食後のトイレや排泄介助、就寝介助を行い、利用者さんが寝たあとは、記録や確認作業などをします。
その後は、夜間の見守りや必要な介助をしながら、朝になると起床介助、着替え、トイレ、朝食などを行って勤務終了です。
利用者さんが寝ている時間帯に、決められた休憩を取れることもあります。
ただし、夜間に何か起こったときには対応しなければなりません。
例えば、転倒しそうになったり、体調が急に変わったり、ナースコールが続いたりすることもあります。
また、「一人で何人の利用者さんを見るのか」も施設によって違います。
20人前後を一人で担当する施設もあれば、複数人で見る施設もあるため、夜勤に入る前には、夜間の職員体制や担当する人数を確認しておいたほうが安心です。
未経験の場合は、いきなり夜勤を任されるのではなく、日勤などで仕事に慣れてから夜勤に入る施設もあります。
また、夜勤だけを担当する「夜勤専従」という働き方もあります。
夜勤専従には経験を条件にしている求人もあるため、未経験から始める場合は、まず日勤で経験を積んでから考える方法もあります。
介護は夜勤を負担に感じる人もいるため、夜勤をしなくても働ける環境を用意している施設もあります。
一方で、夜勤には夜勤手当がつくため、1勤務20,000~30,000円程度になる求人もあります。実際に現在も、1勤務2万円台の求人や3万円前後の求人が見られます。
そのため、経験を積んでから夜勤専従として働く人もいます。
夜勤は収入面ではメリットがありますが、生活リズムに大きく影響する働き方でもあります。
「夜勤をしなければ介護では働けない」と思う必要はありません。
自分の生活や体調に無理がないかを考えながら、夜勤あり・なしを選ぶことも、50代から介護を続けていくうえでは大切だと思います。
夜勤だけでなく、勤務時間そのものを短くするという選択肢もあります。
私自身も、介護を始めたときは短時間勤務からスタートしました。
短時間勤務から始める方法もある
私が選んだ働き方がこれですが、未経験でいきなり介護の仕事をするのが不安な場合に、まずはやってみる感覚で始められます。
実際、介護の仕事には、忙しい時間帯の3~5時間程度や、お風呂の介助だけなど、短時間で働ける求人があります。
「最初から介護職はちょっと……」と思う場合でも、運転が好きな人なら、デイサービスなどの送迎から関わる方法もあります。
送迎だけでも、施設ではどんなことをしているのか、利用者さんはどんな様子なのかを見ることができます。
利用者さんと会話をしたり、車から降りるときに歩行を支えたりすることもあるため、介護の仕事の雰囲気を知るきっかけになると思います。
短時間勤務だと、利用者さんの情報を知る機会が少なくて不安に感じることもあります。
ただ、通常は利用者さんごとに、身体の状態や介助方法などが記録されています。
必要な情報を確認しながら仕事をするので、短時間勤務だから何も分からないまま介助するというわけではありません。
短時間でも、まずは利用者さんの顔と名前を覚えるところから始まります。
そして、勤務時間が限られている分、その時間帯に必要な仕事を中心に覚えていくことになります。
「まずは食事介助を覚えたい」「トイレ誘導から経験したい」など、仕事の一部分から覚えていけるので、未経験から始める人にとっては、負担を抑えながら経験を積みやすい働き方です。
また、介護の仕事は、施設によって必要になる介助も違います。
例えば、特養などで長く働いてきた人は、さまざまな身体介助を経験していることがあります。
一方、デイサービスでは比較的元気で動ける利用者さんが多いため、働いている中ですべての介助を経験するとは限りません。
そのため、介護職として働いていても、「この介助はまだできない」ということはあります。
どうしても苦手な介助や、今は難しいと思う介助があるなら、その介助をする機会が少ない施設やサービスを選ぶのも一つの方法です。
もちろん、できる介助が増えれば、働ける場所も増えていきます。
でも、最初からすべてできる必要はありません。
まずは無理なくできるところから始めて、仕事に慣れてきたら、少しずつできることを増やしていく。
そんな働き方ができるのも、介護職の一つの良さだと思います。
ただ、どの働き方が自分に合うかは、仕事内容だけでなく、施設の雰囲気や利用者さんとの関わり方によっても変わります。
次は、同じ介護職でも施設によって何が違うのか、実際に働いて感じたことを紹介します。
施設によって仕事内容や雰囲気は違う
介護に限ったことではありませんが、職場には自分に合うところと、合わないところがあります。
介護の場合は、特養などの施設系だけでなく、老健、グループホーム、小規模多機能、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームなど、さまざまなサービスがあります。
また、自宅に伺って介助を行う訪問介護のような働き方もあります。
同じ介護職でも、どこで働くかによって仕事内容も、利用者さんとの関わり方も変わります。
例えば、比較的元気な利用者さんが多いデイサービスでは、身体介助が少ない一方で、会話をする機会が多くなります。
しっかり話ができる方が多いからこそ、話し方や話題の選び方に気を使うこともあります。
逆に、特養のように身体介助が多い施設では、移動や排泄、入浴などで体力を使います。
認知症が進んでいる利用者さんの場合は、会話を一方的に成立させようとするのではなく、その方が気持ちよく過ごせるように話を合わせることも大切になります。
もちろん、同じ種類の施設でも、利用者さんが違えば雰囲気は変わります。
中には、ほかの施設では受け入れが難しかった利用者さんを受け入れているところもあります。
暴言があったり、手が出てしまったりする方でも、施設が変わると落ち着いて過ごせることがあります。
利用者さんの性格だけではなく、職員の接し方や施設の環境、介助の仕方によっても、その方の様子が変わることがあるからです。
だからこそ、求人票だけでなく、実際の職場の雰囲気を見ることは大切です。
面接や職場見学のときには、施設内の雰囲気や職員の動きだけでなく、利用者さんの表情も見てみるといいと思います。
施設の中がきちんと整理されているか、掃除が行き届いているかも、一つの判断材料になります。
汚れが目立つ場合は、単に掃除が苦手というだけではなく、日々の仕事が回っていない可能性を考えるきっかけにもなります。
そして、未経験で働く場合に特に大切なのが、「きちんと教えてもらえる職場か」ということです。
もちろん、自分でもメモを取ったり、分からないことを確認したりする努力は必要です。
それでも、利用者さんへの不適切な介助が行われていたり、何を聞いても教えてもらえなかったりする職場なら、注意が必要です。
最初のうちに間違った介助方法を覚えてしまうと、それが自分の中で当たり前になってしまうこともあります。
きちんとした職場では、忙しい中でも必要なことを教えてくれます。
また、職員の中には、言い方がきつかったり、心ないことを言ったりする人もいます。
でも、私はそんな人を見るときには、言葉だけで判断しないようにしています。
その人が実際にどんな介助をしているのかを見るのです。
口は悪くても、利用者さんのことを考えて介助している人なら、そこには学べることがあります。
反対に、言葉はやさしくても、利用者さんへの扱いが雑だったり、危険な介助をしていたりする場合もあります。
介護は、人との関わりがとても大きい仕事です。
仕事を覚えてくると、その人の考え方や性格が介助に表れやすくなることもあります。
以前教えてもらった方法をそのまま続けているのか、慣れから少し雑になっているのか、その人自身の考え方なのか。
理由までは分からないこともありますが、介助の仕方を見ていると、その職場で何が大切にされているのかが少しずつ見えてきます。
同じ介護職でも、働く施設が変われば、仕事内容や利用者さん、職員の雰囲気まで変わります。
だからこそ、求人票だけで「ここなら大丈夫」と決めるのではなく、実際に働く場所を見て、自分に合う環境なのかを確かめることが大切だと思います。
それでも、実際に働いてみて「ここは自分には合わない」と感じることがあります。そんなときは、介護そのものが合わないのか、それとも職場が合わないのかを分けて考えてみてください。
介護職が合わないと感じたら職場を変えてもいい
介護の仕事をするうえで、向き不向きはあります。
以前、施設を運営している方から、「身体介助でも、トイレの失敗の片付けなどを嫌だと思わずにできるなら、介護の仕事はできる」と聞いたことがあります。
やはり、排泄介助や汚物の処理は、人によって「できる・できない」が分かれる部分です。
実際に働いてみて、「これは思っていたより苦手だった」と気づくこともあります。
反対に、
「もう少し元気な利用者さんと関わってみたい」
「特養は体力的にきついので、もう少し介助の負担が少ない仕事をしてみたい」
「利用者さんともっとゆっくり関わる仕事がしたい」
など、働いているうちに次にやってみたいことが見えてくることもあります。
そんなときは、思い切って次の職場を経験してみるのも、介護の仕事の面白さだと思います。
私がこれまで一緒に働いてきた人を見ても、一つの施設だけでずっと働いてきた人ばかりではありません。
訪問介護からデイサービスやグループホームへ移った人もいれば、特養が体力的に大変でグループホームへ転職した人もいました。
それぞれが働きながら、自分に合う場所を少しずつ探しているのです。
介護職は、きちんとした理由があれば、転職先でもこれまでの経験を活かしていける仕事だと思います。
私自身も、最初に働いた特養を7カ月で辞めました。
最初の頃はきちんと教えてもらえていたのですが、次々に職員が辞めて人員が半分ほどになったことで、施設の中がうまく回らなくなっていきました。
その結果、利用者さんへの介助にも問題が出てきて、私自身が「このままではきちんとした介護ができない」と感じ、別の職場へ移ることにしました。
面接では、退職理由としてそのことも正直に伝え、「きちんとした介護ができるようになりたい」と話しました。
すると、次の職場からは「うちは研修をしっかり行っているから大丈夫ですよ」と言ってもらえました。
採用されたあとも、最初の1カ月は職員について仕事を教えてもらいながら覚えることができました。
この経験から、同じ介護職でも、職場が変われば仕事の環境も大きく変わることを実感しました。
もちろん、転職理由によっては、次の職場を探すのが難しくなることもあります。
でも、利用者さんへの介助に問題がある、十分に仕事を教えてもらえない、働き続けることで自分まで不適切な介助を身につけてしまいそうだと感じるなど、きちんとした理由があるなら、職場を変えることも大切です。
未経験だからといって、「最初の職場で頑張らなければいけない」と思う必要はありません。
介護をしたい気持ちはあるのに、施設の対応が合わないことで「自分は介護に向いていない」と自信をなくし、介護の仕事そのものを辞めてしまう人も少なくありません。
でも、合わなかったのが介護そのものなのか、それとも、その職場だったのかは分けて考えてみてください。
介護の仕事には、特養、デイサービス、グループホーム、訪問介護など、さまざまな働く場所があります。
「自分には何が合うのだろう」と働きながら探していけるのも、介護職の良さの一つだと思います。
辞めることは、介護から逃げることではありません。
より自分に合った働き方や、きちんとした介護ができる場所を探すために、次へ進むことも選択肢の一つです。
50代未経験で始めるからこそ、最初の職場だけで自分の可能性を決めつけず、合わなければ次を探すという覚悟も持っておくといいと思います。
私自身も、最初の職場を辞めたことで、介護そのものを諦めずに済みました。
そして、職場を変えてみたことで、「介護の仕事を続ける」という選択肢が現実的になりました。
地方へ移住してから仕事を探す場合も、最初から一つの職場に決めつけず、自分に合う場所を探していくことは大切です。
次は、実際に地方移住後の仕事として介護を選んで、どんなことを感じたのかを紹介します。
50代で地方移住をすると、「移住したあと、どんな仕事ができるのだろう」と不安になる人もいると思います。
地方移住後の仕事として介護を選んでわかったこと
地方移住をするとき、私は「介護の仕事なら、移住先が変わっても仕事を見つけやすいだろう」と考えていました。
そこで、移住する数カ月前にそれまでの仕事を辞め、職業訓練を利用して実務者研修を取得しました。
訓練期間中は、失業手当の給付を延長してもらえたことも、移住前に資格を取るうえで役立ったと思います。
移住後の仕事については、もともと「地方で50代から仕事を探すのは難しいだろう」と考えていました。
実際に仕事を探してみると、その不安を感じる場面もありました。
一方で、介護の仕事については、私が住んでいる地域では求人が比較的多く、自宅から通いやすい施設も選ぶことができました。
「地方に移住したあと、どんな仕事をしよう」と考えていた私にとって、介護を経験しておいたことは大きな安心材料になりました。
ここからは、50代で地方へ移住して仕事を探した私が感じたことと、実際に介護の仕事を始めてから働き方がどう変わったのかを紹介します。
地方で50代から仕事を探して感じたこと
これは地方に限ったことではありませんが、50代になってから仕事を探すと、思っている以上になかなか見つかりません。
求人そのものはあっても、「採用されるか」はまた別の話です。
私自身、大阪で仕事を探していたときにも感じていましたが、50代になると、採用されるのは人手不足の仕事や体力的にきつい仕事、給与があまり高くない仕事などが多くなります。
派遣でも、希望する条件でなかなか仕事が見つからないことがあります。
そうなると、やっと採用された仕事が思っていた以上にしんどくても、「また次を探せばいい」と簡単にはいかなくなります。
次の仕事を見つけること自体が難しくなり、将来的な経験やスキルにつながりにくい仕事を選ばざるを得ないこともあります。
地方へ移住すると、さらに選択肢が少なくなることがあります。
求人そのものが都会より少なく、給与も低い場合があるため、これまで「この仕事はちょっと……」と敬遠していた仕事まで視野に入れなければ、なかなか仕事が決まらないこともあります。
だからこそ、地方移住を考えている50代の人には、移住する前から「その土地で何の仕事なら続けられるか」を考えておくことをおすすめします。
私の場合、そこで選択肢になったのが介護でした。
介護も「人手不足で大変な仕事」というイメージがあります。
確かに、身体的にも精神的にも楽な仕事ではありません。
でも、実際に働いてみると、働き方を選べること、職場を変えても次の仕事につなげやすいこと、短時間勤務などの求人があることなど、50代から働くうえで助かる部分も多いと感じました。
また、私が移住した地域では介護施設が多く、自宅から近い職場を選びやすかったこともメリットでした。
地方でほかの仕事を探すと、求人が少なく、遠方まで車で通わなければならないこともあります。
その点、私が探した範囲では、介護は比較的近い場所にも求人があり、「仕事を選べる」という感覚がありました。
介護は高齢者施設だけではありません。
デイサービスや特養、グループホーム、訪問介護のほか、障害福祉の分野にも人を支える仕事があります。
どの仕事が自分に合うかは人それぞれですが、選択肢が多いことは、50代から仕事を探すときの大きなメリットだと思います。
さらに、介護の仕事を経験しておけば、その経験を活かして、将来は介護の補助的な仕事や、シルバー人材センターなどを含め、年齢に応じた仕事を探していくこともできます。
もちろん、50代でこれまでの経験や資格を活かせる仕事がある人なら、無理に介護を選ぶ必要はありません。
でも、これといった資格や経験がない状態で50代から仕事を探していくのは、思っている以上にハードルが高いものです。
今は65歳を過ぎても働く人が多く、70~74歳でも就業している人は珍しくありません。
そう考えると、50代の今だけではなく、その先の60代、70代まで働くことも視野に入れて、仕事を選んでおくことは大切だと思います。
介護は大変な仕事ですが、一度経験しておくことで、仕事が必要になったときの選択肢を増やせる仕事でもあります。
私自身、50代で介護を経験しておいてよかったと思っています。
では、実際に介護の仕事を始めたことで、移住後の働き方や仕事に対する不安はどう変わったのでしょうか。
実際に介護の仕事をして、移住後の働き方はどう変わったか
実際に介護の仕事を始めてから、移住後の働き方は、そのときの生活状況に合わせて臨機応変に変えられるようになりました。
そして何より、「移住したあと、仕事はどうしよう」という不安がなくなったことが大きかったです。
私が住んでいる地域では、車がないと生活しにくいこともあり、訪問介護の求人は市内の一部に限られているように感じました。
その一方で、あちこちに高齢者施設があり、施設系の求人はかなり多くありました。
そのため、長い車通勤が負担になってきたら、家の近くの施設を探すこともできます。
また、短時間勤務で条件のいいところを選んだり、勤務先を変えたりしながら、自分の生活に合わせて働き方を調整しやすいことも実感しました。
介護の経験があれば、職場を変えてもこれまで身につけた知識や技術を活かせます。
きちんとした理由があって職場を辞めた場合でも、これまでの経験を次の仕事につなげやすいことは、50代から働くうえで大きな安心材料になります。
実際に介護を経験してみると、「もしこれが別の職種だったら、まず次の仕事を探すところから苦労していたかもしれない」と改めて感じます。
さらに、岡山市まで出れば、1日単位のスキマバイトを探すという方法もあり、「この日に少しだけ働きたい」というときに仕事を選ぶこともできるようになりました。
働き方の選択肢が増えたことで、移住後の仕事に対する不安はかなり小さくなりました。
そして、介護の仕事を始めたことで、自分自身の将来の体についても考えるようになりました。
人が年齢とともに、どのように足腰が弱っていくのか。
体が元気で認知症がなくても、足が弱くなるだけで、トイレやお風呂、外出など、毎日の生活にかなり支障が出ることがあります。
「足は大事にしないといけないな」と、50代の今から自分の体を大切にしようと思うようになりました。
また、夫が将来介護を必要とするようになったときにも、介護の経験があることで、必要以上に慌てず対応できるのではないかと思っています。
移住して知らない土地で暮らし、身近に頼れる人が少ない私にとって、これは仕事とは別の意味でも大きな強みになりました。
地方移住後の仕事として始めた介護でしたが、働き方の選択肢だけでなく、自分自身のこれからの人生や体のことまで考えるきっかけになりました。
そして、そんな私が、介護を始める前はどんな気持ちだったのか。
最後に、50代で未経験から介護を始めた今だからこそ思うことをお話しします。
実際に介護を始めて、今思うこと
私は、介護なんて絶対にやらないと思っていました。
それなのに、50代になって地方へ移住し、この先の仕事に不安を感じたことをきっかけに、介護の仕事を始めました。
最初は、「とりあえずやってみよう。ダメだったら、やめればいい」
そんな気持ちでした。
ところが、実際にやってみると、思っていたより楽しいと感じることがありました。
もちろん、きついこともありますし、大変なこともあります。
それでも、利用者さんとの関わりや、少しずつできることが増えていくことに面白さを感じるようになりました。
そして何より、50代になってから感じていた、
「この先、どんな仕事をしていけばいいんだろう」
という不安が小さくなったことは、大きかったです。
介護の仕事を経験したことで、これから先も働くための選択肢が一つ増えました。
「絶対にやらない」と思っていた仕事でも、やってみなければ自分に合うかどうかは分かりません。
ダメだったら、やめればいい。
そんなくらいの気持ちで始めた介護でしたが、今振り返ると、思っていた以上に「やってみて良かった」と思っています。
50代未経験で介護職を始める前に確認したいこと
移住してそのまま今の仕事を継続できる、または今までのスキルを活かして移住後も同じ業種の仕事ができるのであれば、大きな問題はないかもしれません。
でも、50代になってこれまでの仕事を辞め、一から仕事を探す場合は、若い頃のように「採用されたところで働けばいい」と簡単には考えられないこともあります。
もし介護の仕事を考えているのなら、仕事を探す前に、まず「自分はどんな働き方なら無理なく続けられるのか」を考えてみてください。
介護は、働く場所や勤務時間によって負担が大きく変わります。
「介護の仕事ができるか」だけではなく、**「自分の生活の中で無理なく続けられる働き方はどれか」**を考えておくことが大切です。
ここからは、仕事を探す前に確認しておきたいポイントを紹介します。
自分はどんな働き方なら続けられそうか
移住後は、思っている以上に疲れが出ることがあります。
そこへ未経験の仕事を一から始めるとなると、仕事を覚えることだけでも大変に感じるかもしれません。
そのため、移住してからどんな働き方をしたいのか、仕事を探す前に一度考えてみてください。
最初からフルタイムで働きたいのか、それともまずは短時間から始めたいのか。
夜勤はできるのか、日勤だけがいいのか。
そして、毎月どのくらい収入が必要なのか。
私も、最初から「介護をずっと続けよう」と決めていたわけではありません。
「介護ってどんな仕事なんだろう」「自分に合うのかな」と試してみるつもりで、まずは短時間勤務から入りました。
特に施設のフルタイム勤務はシフト制になることが多く、生活リズムを合わせにくい場合があります。
最初から無理をするより、短時間で仕事に慣れてから勤務時間を増やす方法もあります。
介護施設によっては、パートから正社員になったり、勤務時間を増やしてフルタイムへ変更したりできるところもあります。
また、大きな法人では、同じ運営母体で特養、デイサービス、グループホーム、有料老人ホームなど、複数の介護事業を運営していることがあります。
職場が自分に合わなかったとしても、同じ法人内の別の施設へ異動できる場合もあります。
そのため、求人を見るときは仕事内容だけでなく、その運営会社がほかにどんな介護事業をしているのかも確認しておくと、働き方の選択肢が広がるかもしれません。
介護の仕事を探す前に、
「どんな働き方なら続けられそうか」
「どのくらい収入が必要なのか」
「どこまでなら無理なく通えるのか」
を先に考えておくことが大切です。
自分の希望する働き方が分かっていれば、求人の中から、自分に合う仕事を選びやすくなります。
特に地方へ移住した場合は、仕事の条件だけでなく、毎日の通勤そのものが負担にならないかも考えておく必要があります。
通勤時間や勤務時間は無理がないか
地方へ移住すると、住む場所にもよりますが、都会のように電車や自転車で気軽に通勤するのとは違い、車通勤が基本になることがあります。
私の場合、20分ほどの運転でも15kmくらい走ることがありました。
信号が少なく、ある程度スムーズに走れるからこそですが、都会にいたときの「通勤20分」と比べると、かなり長い距離を運転している感覚があります。
そのため、都会にいたときと同じように「通勤20分なら近い」と考えていると、思った以上に運転が負担になることがあります。
特に、これまであまり車を運転してこなかった人は、仕事そのものよりも、毎日の通勤で疲れてしまうこともあります。
また、地方でも幹線道路やバイパスが通っている地域では、朝の時間帯に渋滞することがあります。
求人票に「車で30分」と書かれていても、実際には時間帯によってそれ以上かかることもあります。
そのため、通勤時間は求人票に書かれている数字だけで判断せず、できれば実際に走って確認しておくことをおすすめします。
特に、通勤する時間帯に一度走ってみて、
「本当にこの時間で通えるのか」
「毎日この距離を運転しても負担にならないか」
を確認しておくと安心です。
地方では、同じ「車で30分」でも、道の状況や運転する距離によって疲れ方がかなり違います。
勤務時間についても同じです。
「何時間なら無理なく働けるのか」
「週に何日なら続けられるのか」
「夜勤を入れても生活に支障がないのか」
など、自分の生活と合わせて考えてみてください。
例えば、1日8時間の仕事でも、往復で1時間以上の運転が加われば、一日の負担はそれだけ大きくなります。
反対に、自宅から近い職場で短時間勤務を選べば、仕事以外の時間にも余裕ができます。
50代から未経験で介護を始めるなら、仕事そのものだけを見るのではなく、**通勤時間と勤務時間を合わせて「一日の生活として続けられるか」**を考えることが大切だと思います。
そして、求人票だけでは分からないのが、実際の職場の雰囲気です。
通勤時間や勤務条件が自分に合っていても、「どんな職場なのか」が分からなければ、安心して働き始めることはできません。
そこで、応募する前にできれば確認しておきたいのが、実際の職場の様子です。
次は、私自身が介護の仕事を探すときにも大切だと感じた、職場見学で確認しておきたいポイントを紹介します。
職場見学で確認したいこと
介護の仕事を探すときは、求人票や面接での説明だけでなく、できれば実際に職場を見学しておくことをおすすめします。
求人票には「アットホームな職場」「丁寧に指導します」などと書かれていても、実際の雰囲気は働き始めてみないと分からないことがあります。
だからこそ、見学では施設の説明を聞くだけではなく、実際の施設の様子を自分の目で見ることが大切です。
私なら、まず次のようなところを確認します。
施設の清潔さや整理整頓
まずは、施設がきちんと掃除されているかを見てみます。
床やトイレ、共有スペースなどが清潔に保たれているか、物が乱雑に置かれていないかなどです。
介護施設では、利用者さんが生活しているため、清潔さや整理整頓は仕事のしやすさにも関係します。
また、施設特有のニオイが気になるかどうかも確認しておくといいでしょう。
介護の仕事では排泄介助などもあるため、ある程度のニオイは避けられません。
ただ、ニオイがあるかどうかだけで判断するのではなく、施設全体として清潔を保つためにどのような工夫をしているのかを見ることが大切です。
利用者さんと職員の様子を見る
次に、利用者さんの表情を見てみます。
穏やかに過ごしている人が多いのか、落ち着かない様子の人が多いのか。
もちろん、その日の体調や状況もあるので、表情だけで施設の良し悪しを判断することはできません。
それでも、施設全体の雰囲気を知るための一つの材料にはなります。
そして、働いている職員の様子も見ておきたいところです。
忙しそうに走り回っていないか、職員同士で声を掛け合っているか、利用者さんにどんな接し方をしているかを見てみてください。
忙しい施設でも、職員同士が協力しているところなら、それほど慌ただしく見えないこともあります。
反対に、常に職員がイライラしていたり、利用者さんへの声かけが乱暴だったりする場合は、少し注意して見たほうがいいかもしれません。
ただし、ここも一部分だけを見て判断するのは避けたほうがいいと思います。
私自身、介護の現場を見ていて、話し方が少しきつく聞こえる人でも、利用者さんの安全をしっかり考えている人がいることを知りました。
逆に、優しく話しかけていても、介助が雑だったり危険だったりすることもあります。
見学では「優しそう」「怖そう」という印象だけで判断せず、利用者さんへの接し方や職員同士の動きまで含めて見ることが大切です。
未経験者への教育体制を確認する
50代未経験で介護職を始めるなら、「仕事を教えてもらえるのか」も必ず確認しておきたいところです。
「新人にはどのように仕事を教えていますか?」
「最初は誰かについて仕事を覚えるのでしょうか?」
など、具体的に聞いてみてもいいでしょう。
ただし、見学や面接で「しっかり教えます」と言われたからといって、それだけで安心しすぎないほうがいいと思います。
実際に働き始めると、教える人が忙しかったり、人手不足だったりして、思ったように教えてもらえないこともあります。
そのため、説明だけを信じるのではなく、実際に働いている職員の様子も合わせて見て、自分なりに判断することが大切です。
そのほかにも、職員の人数と利用者さんの人数、施設内の整理整頓、掲示物などを見ておくと、その施設がどのように運営されているのかを知るヒントになります。
「ここで働けそうか」を自分に問いかける
そして最後に、私が一番大切だと思うのが、
「ここで自分も働けそうか」
という感覚です。
施設の設備が新しいかどうかだけではなく、そこで働いている自分を想像してみてください。
- 利用者さんへの接し方は自分に合いそうか
- 職員同士の雰囲気は大丈夫そうか
- 忙しさについていけそうか
- 未経験でも仕事を覚えていけそうか
- 通勤も含めて、ここなら続けられそうか
こうしたことを、自分自身に問いかけてみます。
求人票に書かれている条件が良くても、実際に働いてみたら「思っていたのと違った」ということはあります。
だからこそ、できるだけ職場を自分の目で見て、「この仕事ができるか」だけではなく、「この職場で働き続けられるか」まで考えて選ぶことが大切です。
そして、ここまで確認しても、実際に働き始めなければ分からないこともあります。
だからこそ50代未経験で介護職を始めるときは、「自分にできる仕事か」だけで考えるのではなく、今の生活や体力、これからの働き方まで含めて続けられる仕事なのかを考えてみてほしいと思います。
次は、50代から介護職を始めるときに、仕事を「できる・できない」だけで判断しないために、「続けられるか」という視点で働き方を考えてみます。
なお、施設によっては見学時にマスクの着用を求められることもあるので、念のため自分用のマスクを持って行くと安心です。
「できるか」だけでなく「続けられるか」で考える
最後に、介護の仕事を始めた人によくあることについて書いておきたいと思います。
介護の現場はとても忙しく、教えてあげたいと思っていても、十分に教える時間が取れない施設があります。
また、人手不足で余裕がない職場では、未経験で何もできない新人に対して、嫌味を言う職員がいることもあります。
利用者さんの中にも、どうしても性格が合わない人や、関わることが難しいと感じる人はいます。
そんな環境にいると、
「自分は介護に向いていないのかもしれない」
と思ってしまうことがあります。
でも、介護は、きちんと教えてもらわなければ、なかなかできるようにならない仕事です。
数カ月働くうちに、少しずつ「こういうことなのかな」とコツが分かってくることもあります。
関わる利用者さんがいつも同じとは限りませんし、麻痺のある場所や身体の状態が違えば、一人ひとり介助の方法も変わります。
覚えることは本当にたくさんあります。
しかも、介助の方法はいくつかあり、職員によって自分のやりやすい方法で行っていることもあります。
そのため、教えてくれる人によってやり方が違い、「さっき教えてもらった方法と違う」と言われて戸惑うこともあります。
実際、ベテランだからといって、すべての介助を正しくできているとは限りません。
介護の現場には、自分自身も十分に教えてもらえないまま、手探りで仕事を覚えてきた人もいます。
そのため、人に教えることに慣れていない人もいます。
「見て覚えて」と言われても、未経験の人には、見ているだけでは分からないことがたくさんあります。
忙しいと、どうしても口調がきつくなる職員もいます。
そんな中で仕事を覚えていくと、何もできない自分に落ち込んでしまい、少しずつやる気を失ってしまうことがあります。
でも、そんなときに考えてほしいのが、
「自分はできるのか」だけではなく、「この職場で働き続けられるのか」
ということです。
介護の仕事は、きちんと教えてもらえる環境があれば、少しずつできるようになっていく仕事です。
最初のうちは、できないことがあって当たり前です。
もし半年ほど働いても思うようにできず悩んでいるなら、「自分に能力がない」と決めつける前に、まずはきちんと教えてもらえる環境なのかを考えてみてください。
私が20年介護をしているベテランの方から聞いたのが、
「半年やってできないからといって、その人が悪いとは限らない。教える側の問題であることも多い」
という話でした。
私も実際に働いてみて、その意味が分かるようになりました。
だから、心が折れそうになったときは、
「自分が介護に向いていないのか」
だけではなく、
「この職場で働き続けられるのか」
と、一度考えてみてください。
仕事そのものは楽しい。
利用者さんと関わることは嫌ではない。
もっと介助をきちんと覚えたい。
もしそう思えるのであれば、教えてくれる環境の職場へ移ることで、仕事の見え方が変わることがあります。
反対に、職場の人や環境ではなく、「介護の仕事そのものが自分には合わない」と感じるのであれば、それも一つの答えです。
介護は、施設が変わるだけでも仕事内容や雰囲気が大きく変わります。
「ここは合わないな」と感じたら、次の職場を探してみる。
それくらいの気持ちでいてもいいと思います。
一つの職場だけで「自分には介護は無理だった」と決めつけてしまう必要はありません。
50代未経験だからこそ、できるかどうかだけで自分を判断するのではなく、自分が無理なく続けられる環境なのかまで考えてみてください。
介護を続けるかどうかを決めるのは、そのあとでも遅くありません。
介護の仕事は、実際に働いてみると大変なことも多く、職場の環境によって悩みを抱えることもあります。もし今、介護職を辞めたいと感じているなら、無理をして働き続ける前に、辞めたい理由や次の働き方を考えてみませんか?
まとめ|50代未経験で介護職を始めてみて思うこと
50代から新しい仕事を始めるのは、結構勇気がいります。
若い頃のように覚えられないと感じることもありますし、体力がついていかないこともあります。
だからこそ、この先につながる仕事を考えるなら、50代の今から経験しておくことは決して遅くないと思います。
60代になってから新しい仕事を探すより、まだ動きやすい50代のうちに、これから先も続けられる仕事を探しておくことには意味があります。
その中でも介護は、50代から始めても遅い仕事ではありません。
これまでの人生経験を活かせる場面もありますし、今後の仕事や家族の介護にも役立つ知識や経験を身につけることができます。
もちろん、未経験から介護職を始めるのは簡単ではありません。
これは50代に限らず、若い人でも同じです。
介護は、人の命やこれからの生活を支える仕事だからです。
一つひとつ覚えなければならないことも多く、体力的にも精神的にも大変な部分があります。
それでも介護には、仕事を探しやすいこと、さまざまな働き方を選べること、施設によって仕事内容や雰囲気が違うこと、合わなければ別の職場を探せることなど、多くの選択肢があります。
そして、そこで身につけた経験は、次の仕事だけではなく、自分自身の将来や家族の介護にも役立つことがあります。
私も40代の頃は、「絶対に介護の仕事はしない」と思っていました。
でも、地方への移住が決まり、50代で仕事を探す現実を考えたとき、
「もし無理だったら、また違う仕事を探せばいい」
と思って、職業訓練を利用して介護の資格を取りました。
実際に働いてみると、大変なことも、思っていたのと違うこともありました。
それでも、振り返ってみると「やってみてよかった」と思えることのほうが多かったです。
そして何より、「この先、仕事がなくなったらどうしよう」という不安が小さくなりました。
50代で介護職を始めようと思ったときは、「自分にできるんだろうか」と不安になると思います。
でも、最初からできるかどうかを考えすぎなくてもいいのではないでしょうか。
「できるか」ではなく、「自分に合う形なら続けられるか」
そう考えて、一歩踏み出してみてもいいと思います。
短時間から始めてもいい。
合わなければ別の施設へ移ってもいい。
介護そのものが合わなければ、別の仕事を探してもいい。
大切なのは、最初から正解を決めることではなく、実際にやってみて、自分に合うものを探していくことです。
ダメだったら、それでもいいのです。
でも、一度やってみた経験は消えません。
この先、自分や家族に何かあったとき、そのとき身につけた介護の知識や経験が役立つことがあるかもしれません。
それは、やってみたからこそ手に入った、あなたの大切な経験の一つになると思います。
「ちょっと不安だけど、やってみよう」
そんな気持ちで、まずは一歩踏み出してみてもいいのではないでしょうか。




